勝負の世界と戦いの世界:結果とゴールの違い

  • 2018.07.08 Sunday
  • 23:36

 

長谷部たち選手が、W杯の過程で起きていたことを少しは語り始めている。

やはり、ポーランド戦が終わった後、西野監督がスタッフを含め、全員を集めて、選手たちへ、誇りを失わせるようなことをさせて申し訳なかったと詫びたという。

だが、選手たちは、そうした選択をさせてしまった、勝ちでもない引き分けでもない、負けている状態を作り出した自分たちの責任なのだと、しっかりした自覚をもっていた。

これが、次のベルギー戦でのあの戦いへとつながる。

しかし、勝っていながら、守りに入らなかったのは、あの10分間の負の位相があったからだ、逆に3点目を取るという方へ行ってしまった。

全く違うことなのに。

ポーランド戦は、負けているのに、フェアプレーポイント狙いで、試合放棄、守りでも固めるでもない、ベスト16進出の結果をもたらすためのゴール放棄、戦い放棄である。

だが、ベルギー戦で、前半のような防御体勢をとることは、戦いの放棄でもゴールの放棄でもない。

ここが、わからなくなってしまったのも、あの10分間の「結果のため」の作用の効果である。

W杯は、まさに一刻一刻で、選手たちは関係を成長させていく。ロシアが見事にそれをやり切った。

 

ベスト16、準々決勝を見ていて、グループリーグを1位通過していたなら、ベスト4までは行ったのではないかと思わせる試合状態である。

日本チームは、セネガル戦に勝っていた、またベルギー戦でも勝っていた、なのに「勝つ」結果が出なかったのは、ゴール形成が、監督交代の遅すぎる協会判断のせいで時間がなかったこと、また、あの10分間の放棄によって、なされ得ていないかったからだ。

 

面白い番組を見た。柔道の井上康生が、日本選手に二度だけ負けた、その選手は唯一、井上康生に勝った選手である。

だが、井上の「内股」に対して「内股すかし」を徹底練習して、自然と身体が反応するぐらいにまでなって、井上に「勝った」。そして、優勝校にまでいくことができた。

だが、その選手は、その後、全国大会にもオリンピックにも出場することはなかった。

つまり「勝つ」結果のためだけに技を磨き、ゴールを喪失したからだ。だが、戦いの放棄はしていない。

他方、井上は、負けたことで、内股をさらに磨き上げるゴール形成を研ぎすましていった。

この、明証な実例に、はっきりとスポーツは「結果ではない」こと、それは付いてくるものであって、勝ち負けを「目的」にしてはならないことが、歴然と示されている。

プロ野球でいうと、NHKの球辞苑が、流し打ちとか引っ張りとか、フルカウント、ホームランキャッチ、初球打ちとか、インハイとか、で数字まで出しているのだが、それらは「ゴール=到達目標」の質であって、いわゆる結果査定にはないものだ。選手たちのゴールの質である。試合を作り、戦い、勝ちへ不可避に関与していく、驚くような選手たちの技能である。

 

長谷部は、ポーランド戦後、インタビューで、「それが勝負の世界ですから」と述べたが、戦いではないこと、勝負の結果のことであるのを示した。

そして、その試合後の監督の謝りに対して、選手たちは「ゴール」を再確認し、ベルギーと戦った。その試合は、世界から賞賛された。だが、本田のFKには批判が出た、なぜ、数秒遅らせなかったかと。そこは、どうでもいい。もう、同点に追いつかれたそれは、負けへの経過でしかない。駆け引きは勝負のこと、戦いではない。メキシコがドイツに勝ったとき、徹底して引いて守った。それは戦いであった。

長谷部が、ここを誤認したままでいると、一流の指導者にはなれない。勝負と叩きは違う。そして結果とゴールと目的とは違うということを。

 

協会は、誤認のまま、一流になった日本選手たちに対して、三流の管理当地で、また日本を停滞させていこう。

 

学問も同じである。ゴール喪失の大学教師たちばかりだ。大学はゴールを完全喪失している装置でしかなくなっている。

ゴール=学術生産は、永久に追求し続けねばならないのに、放棄している。

研究の結果だけが、見られている。大卒知性者たちばかりが、評定しているからだ。

結果などはどうでもいいのに、就職のために、研究の質を落としている若手たちの賢さ。その累積の負の効果は計り知れない。

学生、若者、子どもに対する試験だ、成績だ、などどうでもいいことだ。そんなところで、自分自身は磨かれなかった。

 

経済でもゴールを形成してきたから日本は成長した。

しかし、今やゴール喪失の日本。目的も見失っている。脱却せねばならない。

 

お勉強は、経済にも政治にも役に立たないが、研究生産=ゴールは経済にも統治にも役立つ。

そこの違いさえ、わかられなくなっている。

研究生産へ投資しない国は滅びる。大学は、研究生産できない場所であり、賃労働者だけを形成する仕組みである。

別系の研究生産の仕組みを作れていない先進国は、日本だけである。

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